【4,改修計画の提案】

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当該建物の低層部屋上防水改修工事を許画するに当たり、二次調査(目視・指触・打診)診断を行い、部位別耐用年数(要求性能)設定・工法選定・築令・周辺環境等を考慮し、且つ、積極的保全行為(資産価値の向上)の見地に立ち防水仕様策定を行った。

 防水改修工事には、既存の防水層を撤去して新たな防水層を設ける工法と、それらを残したままで防水する工法がある。前者を撤去工法・後者を再生(かぶせ)工法と呼ぴ何れの方法にも長短所がある。
撤去工法採用の前提条件として、既設防水材の劣化が著しく再生工法での既設防水材第一層目の下貼り材として再利用出来ない場合、(アスファルト防水経年数20年以上・高分子系防水経年数12年以上が目安)又は、構造上重大な欠陥(不同沈下等スラブに異常亀裂)が発生している場合としている。
当建物に於いて、屋上は以上の様な撤去工法採用の前提条件となる状況が見られない上、建物使用を継続しながらの工事となるので、既設防水層を残したまま新設防水工事を実施する方法が、コスト・工期短縮・産廃処理・雨養生等での有利点が多いので再生工法採用を推薦したい。


―防水材の選定―


 屋根は建物の中でも最も過酷な条件下におかれている。熱・紫外線・オゾン・酸・アルカリなどの化学的要因や下地挙動などの物理的要因など様々な劣化外力が複雑に影響を及ぼし合い、それによって防水層は徐々に老化・劣化している。
又、同時に屋根の各部位・立上り部・笠木・庇・排水溝・ドレイン周辺なども同じ様に劣化が進行している。その為、改修工事は新築の時の場合と違って、既存の建物が持つそれぞれの異なった条件に対応しながら、いかに適切な工事を行うかが大切なポイントになってきている。従って、建物屋kの現状を正しく把握した上で適切な仕様・工法を選定しなければならない。現在、改修防水工事には熱工法・冷熟工法・常温工法(ト-チ工法・白着層付ル―フィング冷=法)アスファルト防水・塩ビシ―ト防水・ゴムシ-ト防水・塗膜防水等がある。
弊社に於いては、これら全種の防水工法をシステム化しているが、それら全種の中から建物の既存状態(下地等)・納まり状態・改修箇所・屋上用途等を考慮して、最も適した材料工法を推奨させて頂いている。

 本物件に於いて、低層部屋上アスファルト防水シルバー仕上げである為、最も相性の良い(なじみの良い)アスファルト系防水層によるかぶせ工法最適である。
 それに、当該建物は集合住宅であり、住民の価値向上を考えなければならない。その為、防水層仕上げ材も防水と同様に、工法選択を考慮しなければならない。
前述の通りアスファルト防水・仕上げ材にも工法により数種類に分類されるが、以下の点を考慮して改修防水仕様案を推薦したい。
1.トーチ工法の為、煙・臭いの発生が少なく、近隣環境に影響を与えない。
2.改修防水層の重量が6kg/u前後と比較的軽量の為改修後の屋根(建物)にたいする負担も軽減できる。
3.建設大臣官房官庁営繕部監修の建築改修設許基準による改修仕様に対し、公募型技術審査に合格している仕様・材料の為、信頼のおける防水層を形成できる。
4.施工エ程が簡素化・省力化している為、工期短縮が望める。

―総合判定―


 当該建物に於いては、防水層改修施工後15年が経っており、経年相当に防水層の劣化が進んでいる。一部に於いては、防水層のふくれ・端末のシール破断が見られる。
また、防水保証年数が通常10年の為、保証期限が切れることにより、防水事故(漏水等)が発生した場合、自己負担による補修が必要となり、余分なコストが掛かる。漏水が発生してからでは、建物内部や室内機器の汚損破損等の二次的事故にもっながる為、漏水を引き起こす前に、建物の資産価値向上の点から予防保全的改修工事の実施が望ましい。


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